こんにちは!
哲学史を学んだことがないけど、これから哲学書を読解していきたい、と考えている方のための案内を書いていきます。
哲学書を読みはじめの方は、「考える」よりも「調べる」ことが多くなると思います。
内在的にテキスト読解するには、自身の解釈よりも先に、そのテキストの中にいかなる読解可能性が開かれているのかを把握する必要があるからです。
ですので、よく登場する哲学用語をだいたい把握するのに役立つ本、次に、わからないことを調べていくのに役立つ資料を紹介していきます。
1.哲学用語の歴史
・山口裕之『語源から哲学がわかる事典』
タイトルが事典となっていますが、事典の要素はなく、よくできた入門書(本)です。存在論や神学、認識論などにおける哲学用語の遷移を、語源から初期近代あたりの転換期にいたるまで辿っています。
はじめて哲学史を学ぶ場合、個々の哲学者に注目してしまい、用語の遷移というのが見えにくくなっているのではないでしょうか。
まずはいかなる用語をめぐって哲学論争がなされてきたのか、を把握するのがいいと思います。
2.哲学史
・岩崎武雄『西洋哲学史』
非常に読みやすい哲学史の本です。西洋哲学の歴史に通底する思想の流れを辿ることを主眼としています。
そのため本書を読めば、哲学書を読解する際に、点的な読解ではなく、一つの文脈の中で、その背景を考慮して読解することができるようになると思います。
しかし、同書で提示しているのは一つの軸にすぎないため、それを今後より豊かにしていく必要はあります。また、同書は中世が手薄です。
哲学史を学んだことのない方、読んでみたけど消化不良だった方におすすめの一冊です。
・熊野純彦『西洋哲学史 古代から中世へ』、『西洋哲学史 近代から現代へ』
おそらく、多くの方がおすすめしている哲学史の本です。初学者には少し難しいと思いますが、広く哲学者を扱っていること、原典を引用していることが特徴です。二冊目としておすすめです。
・ウォーバートン『入門 哲学の名著』もおすすめです。
3.その他の入門書
ある程度研究対象が定まったら、その対象の時代、地域、テーマなどにあった入門書を読むことをおすすめいたします。まず相談できそうな、その分野の専門家を探して、「入門書」、「卒論レベルの研究書」などを聞いてみることを強くおすすめいたします。
とはいえ、難しい場合も多いかと思いますので、その場合はまず、『哲学の歴史』全12巻の中でご自身の研究領域に近いものを入手するのをおすすめします。同書はかなり詳しい哲学史の本と考えていただければと思います。なので、入門書として紹介するのは気が引けるのですが。
一冊すべて丁寧に読むというよりは、専門分野の周辺知識をざっと頭に入れておくイメージで読んでみるといいと思います。また、参考文献も丁寧に書いてありますので、参考文献にある邦語文献を片っ端から読んでいくのもアリかと思います(もちろん、専門家に入門書を聞くのが一番好ましいですが)。
・『世界の名著』全81巻、中央公論社
少し古いですが、解説と注が親切でおすすめです。哲学書を読む場合は、こちらの訳も持っておくと助かることが多いです。
4.調べるための資料(必携書)
哲学史の本で補いきれないことは、事典などのより詳しい資料にあたるのがいいです。読書が足りない、と勘違いして、もっていない哲学史の本や入門書を大量に漁るのではなく(私はこのような失敗をしました)、資料を調べましょう。代表的なものをいくつかあげます。
・『岩波 哲学・思想事典』
値は張りますが、一冊もっておくと心強いです。値段に抵抗がある場合は『岩波 哲学小事典』もおすすめです。その他事典類は多くあるので、図書館などで自分にあったものを探してみるといいと思います。なるべく大きな図書館へ行き、『岩波 哲学・思想事典』が置いてあるコーナーに行けば、類書をいくつかみつけられるかと思います。
・『哲学の歴史』全12巻
「3.その他の入門書」でも紹介しました。事典のようにわからない哲学者や用語を調べる形で使うこともできます。事典で補いきれない事柄は『哲学の歴史』を読むことをおすすめします。
5.議論をするために(おまけ)
自分が考えていることを、論理的に相手に伝えるにはある程度の技量が必要です。結局、場数を踏むことが近道ですが、ルールを知っておくと少しは楽になります。
・戸田山和久『論文の教室』
卒論を書く際に多くのゼミで紹介されているかと思います。
・『科学技術をよく考える―クリティカルシンキング練習帳―』
議論をするという点では、こちらの本が一番おすすめです。科学技術に関する様々な問題について、クリティカルシンキングを用いて考えるという本です。