第一回 ラッセル『哲学入門』読書会 レポート
第一回 ラッセル『哲学入門』読書会 レポート

第一回 ラッセル『哲学入門』読書会 レポート

2024年4月9日に、第一回ラッセル『哲学入門』読書会がありました。

参加者同士の自己紹介をして、私がラッセルの生涯などを説明した後に、本文を読んでいきました。

7頁から12頁の2行目まで読みました。前書きが短かったので、だいたい4頁程度読んだ感じです。

議論して考えたこと、勉強になったことを簡単に書いていきます。

「知識」の定義

ラッセルは前書きで、本書は「知識の理論(theory of knowledge)」を論じると主張しています。

‘knowledge’は認識とも訳せる単語です。

知識の理論というと、哲学に多少慣れてしまっている私は、「目の前にコップがある」という信念を正当化して知識とするにはいかにすればよいか、ということが頭に思い浮かんで何の疑問もわかないのですが、このような事態が知識の理論であることをなかなか共有できないことがわかりました。

たしかに、日常生活ですと、「目の前にコップがある」というのを知識だとあまり言いません。
私も哲学から離れれば、正しい知識というと、フェイクニュースと本当のニュースの違いや、学問における固定化された知識を考えます。

このような日常的な知識の意味に「加えて」、哲学ではより低次の「目の前にコップがある」と知っている、ということも知識の理論で扱っているということを議論を通してお話ししました。
しかも、ラッセルの場合(そして、それ以前の多くの哲学も)、議論の中心は後者であります。

近代の哲学は、論理的必然性や数学の必然性、認識におけるアプリオリ性によって「目の前にコップがある」などの信念の正当化を行っていましたが、ラッセルはまた別の形で知識の理論を形成していくことになります。


やはり、日常で使う言葉が哲学用語のようになっていると、意味を共有するのが大変になる、と実感しました。

今後の方向性

哲学用語としては、「現象(appearance)」と「実在(reality)」が登場しました。

コップに対して様々な現象があるのに、それが同じコップであることが疑わしいわけです。
その様々なコップに関する現象に対して、一つの筋の通った仕方であるのが、実在のコップです。

様々な現象に密着するのが芸術家である、とラッセルは言います。
モネの連作のように、画家は瞬間瞬間の現象に意識を向けます。

それに対して、実在に目を向けるのが日常の人と、哲学です。
日常の人は画家が見るような現象を気にせず、目の前にコップがあることに何の疑いも持ちません。
それに対して、哲学は画家がみる現象の存在を受け入れた上で、日常的に感じている(触れている)実在とは何であるのか、を問うていくのです。

今後は、このような現象と実在に関する議論が展開していきます。

感想

読みなれてしまった本も、様々な視点を持った方たちと読んでいくと、これまでとは違った形で文章を読むことができるようになるんだな、と改めて実感することができました。
次回もまた楽しみです。


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