第一六回ラッセル『哲学入門』読書会
第一六回ラッセル『哲学入門』読書会

第一六回ラッセル『哲学入門』読書会

2024年11月19日に第一六回ラッセル『哲学入門』読書会がありました。
59頁の第二段落の一行目「ものの知識も…」から、62頁第一段落の終わり「…考えてみよう。」まで読みました。

前回は、記述と面識について簡単にみていきました。

今回は、センスデータ以外に面識している事柄についてみていきます。

すべての知識が面識に依存し、面識を基礎とする

前回前々回で二つの知識を見ました。
例えば、「中国の皇帝」や「フランスの首都としてのパリ」など、見たことや行ったことがなくても(面識していなくても)、その存在があることを私たちは知っており、そのような知識を真理の知識と言っていました。

ところが、ラッセルはどんな知識であっても、面識を基礎とすると主張しています。

ものの知識も真理の知識も、つまりはすべての知識が、面識に依存し、面識を基礎とする。

ラッセル『哲学入門』高村訳, 筑摩書房, 2005年, 59頁

これはいったいどういうことでしょうか。
面識したことがなくても、ある存在があることを知っていることをラッセルは認めているのですが、しかし、どんな知識も面識を基礎とするのです。

これはこれから数章を通して明らかになっていくことなので、とりあえずラッセルの論の展開を追っていきましょう。

ラッセルは、すべての知識が面識に依存するので、私たちが面識するものについて整理してみようといいます。

5種類の面識による知識

これまで面識による知識と言えば、センスデータに関してのみ論じるだけでした。

ここでラッセルは他にも面識されるものがあると主張します。

  • 外的感覚のデータ:センスデータ
  • 内的感覚のデータ:自己意識を伴う
  • 記憶:過去に関する知識が不可能になる
  • 自我:条件付き
  • 普遍:第9章

まず、外的感覚のデータ(センスデータ)についてはすでに議論しているので省きましょう。

ラッセルの議論の順番で見ていきましょう。

■記憶
ラッセルは私たちは記憶を直接面識するといいます。

これに関しては、あまり理由を述べていません。ただ次のように言っています。
「これがなかったとしたら、過去を推理して得られる知識すら不可能だろう。なぜならその場合、私たちは推理されるべき過去があったことすら知るべくもないからである」(ラッセル『哲学入門』高村訳, 筑摩書房, 2005年, 60頁)。

たしかに記憶がなければ、過去から推理して得られる知識が不可能となってしまうので、私たちのほとんどの知識が成り立たなくなってしまうことになります。

「そこに机がある」というときも、これまでの経験(いつそこに行っても机に関する性格を表わしている、ないし、これまでの机に関する経験から、はじめて見た机も、これまで見た机と同様の仕方でそこにある)をもとになされた判断の一つなのです。

記憶に関してより詳しく知りたい場合は、ラッセル『心の分析』の「講義IX 記憶」をぜひ参照してみてください。

■内的感覚のデータ
これは一言で言えば、「面識を面識すること」と言えるでしょう。

例えば、冬のすごい寒い日にすごくお腹を空かせていたとしましょう。
屋台のラーメン屋を見つけて、あなたはラーメンを注文し、温かいそれを無心に食べます。

無心にラーメンを食べ、ある程度欲求が満たされたら、あなたはふと「私はラーメンを食べている」ということに気づきます。

これが、内的感覚のデータです。
つまり、「私はラーメンを食べている」という面識を、面識している状態です。

このような「面識の面識」は、「自己意識(self-consciousness)」を伴っているために、人間以外の動物にはなかなか見られないと言います。

■自我
ラッセルは次に自己意識とのつながりから、「では私たちは自我(Self)を面識しているのか」と問いかけます。

これには、少し考察が必要だと言います。

なぜなら、「私はラーメンを食べている」などを面識しているとき、「そこで出会うのはつねに個別の思考や感情であり、考えらり感じたりしている「私」ではないと思われる」(ラッセル『哲学入門』高村訳, 筑摩書房, 2005年, 62頁)からです。

つまり、「私はラーメンを食べている」などを面識しているとき、面識されているのはあくまで「私はラーメンを食べている」であって、純粋な「私」ではなさそうだからです。

ここからは、次回詳しくみていくことになります。

おわりに

今回は、記述ってなんだろう!!??ということに答えるために、まず、面識についてみていきました。

現在は、議論の道具を整理している感じです!

遠回りな感じがしてしまうかもしれませんが、焦らずじっくり行きましょう!

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