第四回 ラッセル『哲学入門』読書会 レポート
第四回 ラッセル『哲学入門』読書会 レポート

第四回 ラッセル『哲学入門』読書会 レポート

2024年5月21日火曜日に第四回ラッセル読書会がありました。
18頁最後の段落「しかしこれらの哲学者も..」~23頁の2段落目の最終行「…確実だと思われる。」まで読みました。


第一章の終わりから、第二章のはじめまでになります。
これまでの議論からの結論と、これからの議論の方向性を確認する重要な箇所でした。

独立し存続する外部実在

第三回では観念論を否定するかたちで終わりました。
しかし、今回はその理由をたどるわけではなく、観念論の簡単な分析をしています。
その分析も非常に鮮やかです。

ラッセルは観念論は、心と対比されるかぎりでの物質は否定するが、しかしある意味では物質(私の知覚と独立した外部存在)を認めているといいます。
彼は以前たてた問(第三回のレポート)を再び持ち出します。問は以下のものです。

(1)そもそも実在のテーブルはあるのか
(2)もしあるのなら、それはどんな対象でありうるのか。

観念論の議論を振り返ってみますと、(1)に同意していることがわかります。
バークリも私がテーブルを見ていないときにも、テーブルが存在すると認めています。

しかし、(2)に関しては、私たちの常識とはかけ離れていることがわかります。
テーブルは神の心の中にあるのです。
そして、バークリ以外の観念論は、宇宙内の心などを考えて、実在のテーブルを何らかの心の中の観念として規定します。

したがって、常識からかけ離れているように思える観念論も、「第一の問は肯定し、第二の問に対してのみ常人からかけ離れた答え」(ラッセル『哲学入門』高村訳, 筑摩書房, 2005年, 19頁)をしているのです。

観念論が同意していることをラッセルは具体的に次のように述べています。

「色、形、なめらかさなど、どれほど多くのセンスデータが私たちに依存するとしても、それらが生じていることは、私たちから独立な何かが存在するしるしである。そしてそれはセンスデータとはまったく異なるのだが、しかし実在のテーブルと私たちが適切な関係にあるときには、いつでもセンスデータの原因になるとみなされているものである」ということは同意されるのである。

ラッセル『哲学入門』高村訳, 筑摩書房, 2005年, 19頁

したがって、(2)に関して、常人でも同意できるような考えが必要になってくるのです。

第二章の問

とはいえ、第二章で問題になるのは、(1)に関する事柄になります。
ラッセルは次のように述べています。

すべての哲学者が同意するこの点―その本性がなんであれ、実在のテーブルがあるという見解―が決定的に重要なのは明らかだろう。それゆえ、実在のテーブルの本性に関するさらなる問いにとりかかる前に、この見解を受け入れる理由を考察することには意義がある。

ラッセル『哲学入門』高村訳, 筑摩書房, 2005年, 19頁

それゆえに、第二章では「実在のテーブルがあると思う理由」(ラッセル『哲学入門』高村訳, 筑摩書房, 2005年, 19頁)、要するに(1)を肯定する理由を考察することになります。

(1)は、すべての哲学者が同意するほどに重要な箇所であるために、その理由を検討する価値があるというわけです。
みんな同意しているから、次(2)に進もうとはならないわけです。

しかし、多くの哲学者が同意しているにもかかわらず、「実在のテーブルがあると思う理由」を考察するのは非常に困難です。
なぜなら、私たちが直接しているのは、実在のテーブルではなく、センスデータにすぎないからです。

第二章でわかること

それでは、第二章でわかることって一体なんでしょうか。
私たちが知ることができるのが、センスデータにすぎないのなら、外部の実在が存在していると言えないのなら、私たちは常に夢の中にいると言ってもよくなってしまいそうです。
しかしラッセルは、このような可能性考え受け入れがたいものとして次のように言います。

とはいえ、こんな可能性はないと厳密に証明することはできないにしても、本当に夢にすぎないと想定すべき理由もなったくないのである。なぜないと言えるのか、これこそ本章で理解しておくべきことである。

ラッセル『哲学入門』高村訳, 筑摩書房, 2005年, 22-3頁

ラッセルは実在のテーブルがあると証明することはしませんが、私たちが知覚している事柄が「本当に夢にすぎないと想定すべき理由もなったくない」ということ、を理解することはできるといいます。
第二章でわかるのは以上のことになるようです。

おわりに

今回はどんどん問が深まっていく(問が一段上がる)のが実感できる範囲でした。
次回からはここで形成された問の詳細を考察していくことになります。

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